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「へーえ」
房一はあれから相沢の息子を診みに五六度行つた。殆どその度ごとに会つているので、相沢知吉といふ人物については一通りのことは知つているつもりだつた。同時に相沢の経歴についても聞知していた。
「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」
「知吉さんはこれまで散々踏みつけられて来たんだから、自分が戸主になつてみるとこれまでの腹いせといふ気もあるんでせうな」
読経どきやうはまだ始まらなかつた。
小谷はしばらく放つていた糸を手許にひきよせて、水の中の鮎を眺めながら云つた。
「あれだね、君は見かけによらない――親思ひなんだね!」
と、房一は加藤巡査に云つた。御苦労だが、加藤巡査には角屋のところで本署の自動車を一先づとめてもらひたい。こつちは自分が引受けるから、こゝへ乗りつけないやうに何とか待たせていたゞきたい、その間にこちらの始末をつけ、自分が責任者になつて出向いてよく話をするから――。
「はあ、いや。もう手前どもは老いぼれ同然ですからな」
酔つぱらふと家にぢつとしていられない性分だ。ひる間だらうと、夜ふけ近からうと、ふらりと表に出かける。たまに、子供が、
練吉は永い間黙つていた。それから、いかにもいやいやな調子で、
と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。